The Banker誌発表の世界銀行ランキングに中東欧の銀行としては初めて、ロシアのズベルバンク(旧貯蓄銀行)が82位でランクインした。

同誌によれば、中東欧地域の10大銀行(資産額ベース)は以下の通りとなる。

1位、ズベルバンク(ロシア)、75億ドル
2位、ヴニェシトルグバンク=旧外国貿易・外国為替専門銀行(ロシア)、49億ドル
3位、OTP銀行(ハンガリー)、22億ドル
4位、PKO銀行=旧貯蓄銀行ポーランド)、21億ドル
5位、ガスプロム銀行(ロシア)、18億ドル
6位、バンカ・コメルチアーラ・ロマーナ(ルーマニア商業銀行)、12億ドル
7位、インターナショナル・インダストリアル・バンク(ロシア)、11億ドル
8位、新リュブリャナ銀行(スロヴェニア)、9億ドル
9位、アルファ銀行(ロシア)、8億ドル
10位、ロスバンク(ロシア)、7億ドル

中東欧地域では、ロシアの銀行が上位に多く食い込んでいる様子が窺われる。さて、上記では、「旧貯蓄銀行」という表現を何度か使用しているが、これは、過度な重工業化から、慢性的な投資資金不足を常に抱えていた時の共産党政権が、住民の余剰資金を吸い上げる目的で、各国において、全国の津々浦々にまで支店網を整備していたものを指す(チェコでは、チェスカー・スポシテルナ銀行がこれに当たる)。
貯蓄銀行は、体制転換を経た現在に至っても、支店数、口座数で他を凌駕しており、消費者金融市場でダントツの市場シェアを握っているケースが多い。


8月9日付ジェチポスポリタ紙に拠れば、数年前まで、ロシアの銀行部門規模はポーランドのそれよりも小さかったものが、石油・ガス価格の高騰によるロシア経済の好景気の波に乗る形で、現在では、年間40%もの驚異的なスピードで拡大を続けているという。
これを受けて、ロシアでは、銀行のカード化も順調に進行しており、2002年末にはカード発行残高が1500万枚であったところ、2005年末では、5500万枚に達している。ただし、ロシアで発行されている銀行カードの99%はデビット・カードであり、全体の94%までのカード決済はATMからの預金の引き出し目的であるという。一般店舗での使用目的でカードを使うロシア人はまだまだ少ないようだ。


最大手のズベルバンクでも、未だにクレジット機能付きの銀行カードの発行には至っておらず(ただし、近く発行の意向)、銀行カードの発行残高が2100万枚に達し、そのうち、500万枚がクレジット・カードを兼ねている移行先進国ポーランドの現状と比較すると、遅れが見られる。消費者向けローン市場を見てみても、ロシアでは、2003年末から90%の成長が認められるものの、消費者ローン貸付残高の対GDP比は、中東欧各国で8−15%ほどのレンジであるのに対して、ロシアでは同6%と、まだ、今後の成長が期待される段階だ。
ちなみに、代表的な消費者向けローンである住宅ローン市場でも、40億ドル規模(対GDP比0.4%)であり、中東欧各国の3−10%と比較すると、相対的に小さな規模に留まっている。


さらに、銀行部門の所有構造に目を向けてみると、ポーランドハンガリーチェコでは、すでに銀行セクターの大半を外資が占めているのに対して、ロシアでは、銀行セクター総資産の42%が国庫の下に置かれており、外資は全体の9%を占めるに過ぎない(銀行部門の総資産のうち、35%をモスクワ拠点の国内民間銀行、28%をズベルバンク、14%をその他政府系銀行、14%を地方拠点の国内民間銀行、9%を外資系銀行が、それぞれ占めているという。2006年上半期、インターファックス通信)。
ただし、ヨーロッパ系の銀行を中心として、ロシアでの銀行買収に乗り出す動きもあり、最近では、オーストリアのライファイゼン銀行がロシア国内ランキング第22行であるイムペクス銀行を買収する動きを見せている。


多くのアナリストは、今後とも、ロシアの金融市場は拡大基調を維持すると見ており、外資系銀行がどう出てくるか注目されるところである。


追記:
以上、駆け足で、ロシア銀行セクターのほんの触りを紹介したが、ウクライナでは、ポーランドの旧外国貿易・外国為替専門銀行であるペカオ銀行が積極的な出店攻勢に乗り出すなど、ロシアとはまた一風変わった動きが見られる。
いずれ、ウクライナの銀行セクターに関するレポートも纏めてみたい。