2020-01-01から1年間の記事一覧

【ポーランド大統領選挙】アメリカとユダヤとハーメルンの笛吹き男と

先週日曜の大統領選挙、この日は、連日、鉄砲水のような雨が降るポーランドの6月らしからぬ日々にあって久方ぶりの晴天に恵まれた。 投票率も64.3%に達し、国民の大きな関心を集めた今回の選挙だったが、選挙の隠れた争点は、アメリカとユダヤだった。 筆者…

【ヒットチャート検閲と催涙ガスと】ポーランドは再び過去の暗い時代に戻っている。小生が聞き語りや映像、本でしか知らない社会主義時代の人権抑圧が行われている。

ワルシャワ王宮前、2020年5月17日(日)、午後12時30分頃撮影。土曜のデモが行われタ王宮前も一見すると平静を取り戻している 王宮から約1キロ離れた国家保安局 (BBN) 前、その周辺の道路では本日(17日)も行われる可能性があるデモに備えて鎮圧部隊が待機…

【トルコリラとポーランドズロチ】トルコの通貨リラ安が止まらず、1ドル7リラを切っている。ブラジル、南ア、ロシアなど新興国通貨はどれも弱含んでいる。ポーランドズロチ (PLN) も例外ではなく、今年1月の1ドル3.7ズロチから直近では4.2ズロチにまで10%以上も落ちている。

ワルシャワ南東150キロにあるヴィスワ川沿いの観光地、カジミェシュ・ドル二ィ (Kazimierz Dolny)。5月10日撮影(本文とは関係ありません) トルコリラ (TRL) に関しては歴史的な落ち幅が尋常ではなく、2011年から現在までにその価値は1/5となった。この間、…

【バルチックパイプ】4月30日、ノルウェーの多陸棚で産出する天然ガスをデンマークの海底を伝いポーランドまで届けるバルチックパイプ(Baltic Pipe)の建設契約の調印式が行われた。パイプラインを建設するのは、イタリアの半国営ガス石油会社のEni社(F1レースのアジップオイル供給元として知られている)傘下のエンジニアリング大手Saipem社 (Società Anonima Italiana Perforazioni e Montaggi) であり、パイプライン総工費は2.8億ユーロ(320億円強)。

ワルシャワ北部ジェラニィ地区にあるPGNiG社(ポーランド石油ガス採掘会社)が所有する発熱・発電所。1952-1956年にかけて当時のソ連の技術で建設された。瀝青炭を主燃料としているが、2020年末までに天然ガス発電棟が建設される予定で、発電量は1.7テラワッ…

【コロナ禍とポーランドの有給休暇】ポーランドでは勤務期間に応じて年間20日間ないし26日間の有給を取得する事が労働法典で義務付けらている。コロナにより在宅勤務(praca zdalna: プラーツァ・ズダルナ)が導入されてから、在宅なのに有給を消化する事が推奨されている。

ポーランドでは5月1日は「労働節」の休日で、社会主義時代に制定され、なぜか現在まで残っているほぼ唯一の休日となっている。一度に二人までか、社会的距離を保っている場合には、観光も可能であるが、飲食店は軒並み閉まり(テークアウトのみ)、ホテル…

【ポーランド大統領選挙】ポーランドで5月10日に行われる予定の大統領選挙では与党「法と正義」の現職ドゥダ大統領が優勢であるが、コロナ危機のさなかに封書による投票という奇異な方法で選挙を強硬に実現しようとしている与党への市民の反発が高まっている。

ワルシャワ市のモコトゥフ区は緑豊かな住宅地で都心にも近い そんな住宅地(社会主義時代に建設された大型マンション)の一部にいきなり、検察局(左側)と区役所の一部庁舎(右側)がある。検察局に用があって初めて行くと、大概ビックリするだろう 4月27日…

【ヤマル・ガスパイプライン】今回のコロナ騒ぎの直前、今年2月にワルシャワの和風ケーキが注文できる喫茶店 Matcha Tea House で会った知人のエネルギー専門家は「ヤマルはもう終わりだよ」とつぶやくように言った。彼は、長く、ポーランドを代表する経済シンクタンクでエネルギー問題を担当していた人物だった。ヤマル・ガスパイプラインは延長4196キロ、遠い西シベリアのヤマル半島からベラルーシ、ポーランドを通り、ドイツまで過去25年にわたり、天然ガスを供給してきた。

ロシアにとってシベリア開発は帝政時代から続く超長期プロジェクトである。ポーランドで発行されているポーランド人向けのロシア語教科書にも、シベリア鉄道の話題が誇らしげに掲載されている 現在、ロシアの天然ガス輸出全体の15%弱を担っていると考えられ…

【中絶禁止と性教育禁止とホロコーストと】4月15日水曜、ポーランド国会(下院)では、驚くべき法案が多く読回に付された。14時15分、未成年者への狩猟解禁法案、15時30分、相続人不在により国有化されたホロコースト犠牲者の資産関連法、16時、性教育禁止法、17時、中絶部分禁止法。今後これらの法律が委員会に回され、更に討議を経て法律として採択に移されるかが争点である。

これが今回の法案である。法案は「第8次ポーランド共和国下院」に向けて出されており、中絶禁止条件の厳格化法案には文書番号2146番が、性教育禁止法案には文書番号3751が振られている。法案の末尾には必ず理由書が添えられており、これを読むと法律案者の意…

【コロナウイルスと封筒】ポーランドでは、コロナ騒ぎを受けて、「危機対策のための盾」法と名付けられた包括的な救済パッケージが発表されたり、他のEU諸国同様、市民生活に様々な制限が加えられており、統制下での立法を追うだけで大変な状況にある。ここへきて、5月の大統領選挙は封書のみで行うという法律が下院を通過し、いよいよ、事態は「法のインフレ」とも呼べる状況に近づいてきた。

「法のインフレ」という言葉を筆者が知ったのは、2005年に岡山大学の田口雅弘教授が『ポーランド体制転換論』を上梓した時だった。 当時、ポーランド政府奨学生としてワルシャワ経済大学への「就職」(形式上は講師見習いとなり、教授が利用する特別食堂にも…

【コロナウイルス】 ポーランドでは国会でのスピード審議を経て、「コロナウイルス特別法」が可決され、8日日曜に大統領が署名、9日月曜にはすでに施行された。法律は全部で13ページ、小ぶりのボリュームではあるが、内容は示唆に富んでいる。

本ブログを執筆している月曜(9日)時点でポーランドでのコロナウイルス感染者数は16名、本日から、ポーランドードイツ国境、ポーランドーチェコ国境では越境者の全員に健康チェックが行われ、数日後には、国際列車の乗客全員が体温チェックの対象となると言…

【ポーランド発電事情】 ポーランドはEUから多額の復興資金を得て、これまで高い経済成長率を維持してきた。とりわけ、高速道路、鉄道、発電所の建設などのインフラ投資に主として充てられる「結束基金」(Cohesion Fund) には、2014-2020年に839億ユーロ(1兆700億円)もの巨費が計上され、経済成長をけん引してきた。ところが、この結束資金からの受取額は2021-2027年には、644億ユーロ(7730億円)へと約25%も減らされ、さらに、受取額の25%は環境対策に費やすことが義務付けられる模様

ブレグジットの影響もあり、ポーランドが受け取る予定のEU結束基金は25%カットとなる。そもそも結束基金とは何だろうか。もともとは、豊かな北欧諸国(ドイツ、英国も含む)が貧しい南欧諸国(スペイン、イタリア、ギリシャなど)の経済発展を促し、経済格…

【エネルギー】ワルシャワから見たドイツのエネルギー政策: 1月29日(水曜)、ベルリン発のロイター電は、ドイツ政府が2038年までに脱石炭火力発電を実現すると報じた。炭鉱をはじめとする石炭村への補償額は空前絶後の400億ユーロ(4.8兆円)。1月中旬、実はこの動きを早くも察知する報道がポーランド語で出ていた。

昔から「ドイツが風邪をひくと、ポーランドは肺炎になる」と言われ、それだけ、ポーランドは歴史的にドイツ経済への依存が強く、また、ドイツの影響をもろに受けてきた。 ポーランド人は若者を中心として英語の話者が多いが、それは、何か事があれば、国を捨…

【ポーランド映画】Pan T. (T氏)

不思議な映画だ。 冒頭で、「この映画は誰かの自伝に基づいたものではない」と字幕が出る。 なので、主人王の名前は「T氏」とだけ明かされ、彼は保安局(スターリン時代に機能していた反革命罪を追求する機関、略称はウーベー)に呼び出されてもPan T (Mr. T…