2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【ポーランド大統領選挙】ポーランドで5月10日に行われる予定の大統領選挙では与党「法と正義」の現職ドゥダ大統領が優勢であるが、コロナ危機のさなかに封書による投票という奇異な方法で選挙を強硬に実現しようとしている与党への市民の反発が高まっている。

ワルシャワ市のモコトゥフ区は緑豊かな住宅地で都心にも近い そんな住宅地(社会主義時代に建設された大型マンション)の一部にいきなり、検察局(左側)と区役所の一部庁舎(右側)がある。検察局に用があって初めて行くと、大概ビックリするだろう 4月27日…

【ヤマル・ガスパイプライン】今回のコロナ騒ぎの直前、今年2月にワルシャワの和風ケーキが注文できる喫茶店 Matcha Tea House で会った知人のエネルギー専門家は「ヤマルはもう終わりだよ」とつぶやくように言った。彼は、長く、ポーランドを代表する経済シンクタンクでエネルギー問題を担当していた人物だった。ヤマル・ガスパイプラインは延長4196キロ、遠い西シベリアのヤマル半島からベラルーシ、ポーランドを通り、ドイツまで過去25年にわたり、天然ガスを供給してきた。

ロシアにとってシベリア開発は帝政時代から続く超長期プロジェクトである。ポーランドで発行されているポーランド人向けのロシア語教科書にも、シベリア鉄道の話題が誇らしげに掲載されている 現在、ロシアの天然ガス輸出全体の15%弱を担っていると考えられ…

【中絶禁止と性教育禁止とホロコーストと】4月15日水曜、ポーランド国会(下院)では、驚くべき法案が多く読回に付された。14時15分、未成年者への狩猟解禁法案、15時30分、相続人不在により国有化されたホロコースト犠牲者の資産関連法、16時、性教育禁止法、17時、中絶部分禁止法。今後これらの法律が委員会に回され、更に討議を経て法律として採択に移されるかが争点である。

これが今回の法案である。法案は「第8次ポーランド共和国下院」に向けて出されており、中絶禁止条件の厳格化法案には文書番号2146番が、性教育禁止法案には文書番号3751が振られている。法案の末尾には必ず理由書が添えられており、これを読むと法律案者の意…

【コロナウイルスと封筒】ポーランドでは、コロナ騒ぎを受けて、「危機対策のための盾」法と名付けられた包括的な救済パッケージが発表されたり、他のEU諸国同様、市民生活に様々な制限が加えられており、統制下での立法を追うだけで大変な状況にある。ここへきて、5月の大統領選挙は封書のみで行うという法律が下院を通過し、いよいよ、事態は「法のインフレ」とも呼べる状況に近づいてきた。

「法のインフレ」という言葉を筆者が知ったのは、2005年に岡山大学の田口雅弘教授が『ポーランド体制転換論』を上梓した時だった。 当時、ポーランド政府奨学生としてワルシャワ経済大学への「就職」(形式上は講師見習いとなり、教授が利用する特別食堂にも…