ル・フィガロ紙は、このほど、UBS銀行が「物価と賃金」というレポートにおいて、世界主要都市の労働時間を調査した結果、ヨーロッパ人→アメリカ人→アジア人の順番に労働時間が長くなり、有給休暇日数も少ないという結果が出たことを紹介している。

とにかく、欧州人はよく休む。<< l'Europe est tres attrayante pour les employes qui accordent beaucoup d'importance a leur temps libre >>.
「欧州は、自分の自由時間を重視する雇用者にとっては、大変、魅力的な土地だ。」
西欧諸国は、有給休暇日数では、国際平均の年間20日間台の水準にあるが、都市間で大きな差が見られ、例えば、ベルリンでは、平均の有給休暇日数が29日間であるところ、ロンドン、ダブリン、ローマでは、さらに+8日間(!)の有給休暇を享受できるという。


次に、年間平均労働時間を見てみると、東欧の諸都市は、1687時間(週ベースでは39時間)となり、世界平均(途上国含む)の1844時間より少し少ないくらいであるのに対して、最も労働時間が少ないのは、パリの1481時間であり、これを週ベースで割ると、ちょうど、世界的に名高い「週35時間制」になるという。この記事のタイトルもずばり、"Paris, championne mondiale du farniente"(パリ、無為の世界チャンピオン)となっている。


それでは、世界で一番労働時間が長い都市はどこでしょう? 答えは、ソウルの2317時間(週50.2時間!!!)となり、以下、香港(2231時間)、台北(2143時間)、デリー(2121時間)とアジア諸都市が続く。わが東京が上位に出てこないのは、幸いと言うべきか。アジア平均では、年間労働時間は2088時間となり、平均有給休暇日数は12日間にしかならないという。日本の場合には、これよりも有給休暇日数が多いと思われるが、有給を全て消化できないという問題があるため、事態は少し複雑かもしれない。


米国は、アジアの次に休暇が少なく、シカゴ、ロスアンジェルス、ニューヨークの三都市では、年間労働時間が1900時間近傍にあるかこれを超えており、有給休暇日数も13−17日間のレンジに収まる。
1980〜2004年の間に米国人の労働時間がほとんど変化しなかったのと対照的に、欧州では、この20年間にさらに時短が推し進められた。
UBS銀のレポートは、過去20年間における欧州の休暇志向こそ、「古い欧州」と米国との間の経済パフォーマンス格差を生み出した張本人であるとしている。<< Ceci a diminue la croissance economique potentialle en Suisse, en Allemagne et en France de 0.3 % a 0.5 % par an >>.
「長期休暇は、スイス、ドイツ、フランスの潜在経済成長率を年間0.3−0.5%押し下げてきた。」欧州が、休暇大国を謳歌できるのも永遠ではないのかもしれない。


そんな欧州経済が何とか回っているのも、欧州企業が、東欧・中国などの低賃金国へと積極的に投資を行ってきたことに拠るところが大きいと思われる。
UBS銀の調査では、世界主要都市の被雇用者手取り時給額平均が6.5ユーロ、米国平均が12ユーロ、西欧平均が11ユーロであったところ、中東欧ではわずかに2ユーロと出たという。<< Ainsi, dans la capitale bulgarie, Sofia, on paie des salaires semblables a ceux verses en Inde et au Kenya >>.
ブルガリアの首都ソフィアでは、インドやケニアのそれに匹敵する額の賃金しか支払われていない。」

欧州企業のグローバル戦略は、東欧と中国を外して語ることはできない時代となっている。


単語
farniente: イタリア語ファルニエンテから。無為、安逸
parasseux: 怠け者
conges payes: 有給休暇
en deca de qc: 〜の手前に
taux de croissance economique: 経済成長率
salaire horaire: 時給
queue du peloton: 最後尾集団
main-d'oeuvre: 労働力

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無為の都はまたファッションの都でもある。
今後は、仏語の練習も兼ねて、パリの最新ファッション情報についても、折を見て、紹介していきたい(原文と試訳を併記していますので、どなた様か、よろしくない箇所を訂正いただけると幸いです)。


ル・フィガロ・マダム紙は、今夏のビジュー・コレクションの傾向を分析している。キーワードは、la legerete(軽やかさ)、une elegance subtile(繊細なエレガンス)、ultralight(ウルトラライト)。
記録的な猛暑、こんな季節には、基本においてシンプルでデリケートな作品を作るクリエータのコレクションがお誂え向きだ。


マリ・エレーヌ・タイラック(Marie-Helene Taillac)は、10年前から活躍しているクレアトリス(クリエータ)で、インドのジャイプールにアトリエを構えている。<< Je voudlais creer des bijoux qui s'accordent avec ma facon de m'habiller, dans de belle matieres, mais dans un style qui corresponde a notre epoque >>.
「私は自分の好みの服に合いそうな、良質の素材を使ったアクセサリーを作ることがすきですが、もちろん、今の時代にマッチしたスタイルというものも追求しています。」
彼女のコレクションは、さまざまな色の貴石、宝石をゴールドでできた円形の小さな輪が囲んでいるモチーフが特徴だ(下のリンク参照)。6つのマルチカラー・サファイヤが付いたブレスレットが580ユーロから。

http://www.twistonline.com/Detail.aspx?ID=2527


ジュエリー学専門の美術史家、マルゲリット・ドゥ・サルヴァルは以下のように語っている。
「1990年代半ば頃から、軽快で持ち運びやすい感じのフォームへの回帰が見られます。これは、1980年代のこれ見よがしな美学への反動から来ています。」<< Depuis le milieu des annees 1990, on observe un retour a des formes plus aeriennes, plus portables, en reaction a l'esthetique ostentatoire des annees 1980 >>.
都会派で行動的な女性の欲求に合致したウルトラライト路線は、「ヴァンドーム広場」(パリの奢侈と上流階級の象徴)に確かなオールタナティヴを提供してきている。


マリ・ポニャトフスキ&ヴァネッサ・ドゥ・ジェギェのコンビは、新進気鋭のクレアトリス。2年前に彼らの最初のコレクション、<>が世に出たばかり。
2006年夏コレクションには、小粒のダイヤモンドをあしらったプラチナでできた一対の蝶々のモチーフを用意している。
「蝶の羽の形を単純化すると同時に、なるべく軽くて詩的なイメージのあるものを目指しました。一方で、小粒のダイヤモンドが(二匹の蝶を結んでいる)チェーンに活き活きとしたアクセントを加えています。」<< En reprenent simplement la forme des ailes, nous l'avons reduit a son aspect le plus leger et le plus poetique, tandis que les pampilles lui donnent un cote viant au bout de sa chaine >>.


シェ・ヴィクトリア・キャサル(Chez Victoria Casal)の今夏コレクションは、LAの70年代の雰囲気をイメージした<>(パルミエ)シリーズ。ダイヤで縁取りがされたプラチナ製、ゴールド製の装身具で、価格は550ユーロから。実際に、パルミエ=椰子の木を象ったモチーフであるのか、パルミエはLAの海岸をイメージした単なるコレクション名であるのか、興味が尽きないところだ。

http://www.victoriacasal.com/site/site.swf


単語:
arborer: 見せびらかす
colliers massifs: 厚ぼったいネックレス
facon: 好み、やり方
surcharger: 背負い込みすぎる
or (jaune): ゴールド
or blanc: プラチナ
pierre fine: 貴石
pierre precieuse: 宝石
boucles d'oreilles: イヤリング
epuree: 洗練された
aerienne: 軽やかな
envie: 欲求、嫉妬
ostentatoire: これ見よがしな
poignet: 手首
tandis que = while
tandem: 対の、自転車
vitrine: ショーウインドウ
pulluler: 人がひしめく、物がやたらにある