いよいよ明日、ワルシャワに戻ることになった。

11月14日(月)に帰国してから3週間、実家にいたことになる。この間、東京に一泊、横浜に一泊、東京に日帰り、茨城北部を日帰り旅行したほかは、ほとんど実家にいて、完璧なニート生活に浸っていた。
最初の一週間は、なんと無しに過ぎ、二週目には、ワルシャワのバイト先である「さくら日本語学校」(http://www.sakura.edu.pl)の命を受けて、ポーランドに漫画家を招聘すべく、奔走。営業電話をかけまくり、渋谷にある某一流漫画専門学校にたどり着いた。なんと、その学校の理事長は、自分の留学先のワルシャワ経済大学で日本語を教えているO先生の知り合いで、奥様はポーランド人、さらには、氏の長女とはたしか2000年だったか、恵比寿で一度、飲んだことがあるというところまで逢着した。それだけではない。同校の前校長は、これまた、一流のデザイナーであり、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ金賞受賞者だという話。
とんとん拍子に提携話は進んで、先方がワルシャワまで視察団を派遣、当方の受け入れ態勢を確認後、すぐに人選に移ろうということで落ち着いた。まったくマイナー語学の縁とは、一度繋がりだすと、あとは話は早いのである。このほかにも、もう一校、漫画家の送り出しに協力したいという学校が現れた。
実現すれば、ポーランド史上初の「MANGA専門学校」の立ち上げとなり、自分も現地テレビに出るくらいのことにはなるかもしれない。
今、ワルシャワっ子の間で日本はブームなのだ。若い女の子は、首筋や手の甲に「愛」、「恋」、「桜」、「美」などの漢字のタトゥーシール(タトゥアシュ)を貼っているし、「Terra Nova」というちょいダサめ(だがワルシャワでは先端)のブランドショップでは、「テッラ・ノヴァ 日本」(+なぜか赤い菊のご紋章付き)と日本語で刺繍がされたジャケがぶら下がっているし、なにより、「さくら日本語学校」は今年9月に開校以来、すでに生徒数が100名を突破しているのである。
彼らが日本語を学ぶ動機は、「漫画を読みたい、描きたい」の一言に尽きる。したがって、集まってくる人間も小学生から社会人まで、学歴も職業も様々な人たちである。
今まで、漫画とは縁もゆかりも無かった自分だが、日本語教師のバイトを通じて、その世界に深く入り込むこととなった。先日も「さくら」の生徒から「ゴシロリ=ゴシック・ロリータ」の雑誌購入を頼まれた。
さっそく、近くの漫画・同人誌専門店に行ってみる。ゴシロリとは、茨城県下妻市を舞台にした中島哲也監督の名画(?)『下妻物語』で深きょんが着ていた服(それは少しピンク系統の色が多すぎる嫌いがあるが)と言えば、イメージが湧くだろうか。ところが、「ゴシロリ」の支持者は、案外少ないらしい。苦労の末に、それっぽい表紙の付いた同人誌を三冊購入。袋詰めにされているため、中身は確認できない。注意しなければならないのは、この手の雑誌には、露骨なSEXシーン満載のものが多いことである。ただし、「棲み分け」はできているようで、いわゆる「18禁」のエリアと「少女向け同人誌」のコーナーには、表紙だけ見ると同じような雑誌が並んでいるが、中身は違っているということになる。面白いものである。
以前から思っていたことだが、欧州、特にドイツ語圏の都市部では、女性の男性化が進行している。ユニセックス化した女性は一見すると、男性と区別ができない。端正な顔立ちをした男性がいるなと思うと、女性であったりする。彼女たちの間で人気があるのは、音楽ではゴシックロック、衣装では黒の革ジャン、それに、ハードゲイが愛用しているような金属鋲の縁取りのある黒の帽子であるらしい。「ゴシロリ」が一部欧州の女性の目に憧れと映るのも、黒を基調とした復古調の衣装に黒いマニキュア、黒の口紅といういでたちが、どこか、この世のものではない彼岸の世界、ギリシャ神話のオルフェウスとエウリュディケの世界を思わせるからかもしれない。
思わぬことから飛び込んでみた漫画文化の世界、結構、はまりこんでしまうかも知れない。