先週金曜日(1月6日)、ルビンスカが解任された。彼女は、稚拙な外資批判を口にするなど、その大臣としての資質には大きな疑問が投げかけられていた人物であった。

後任は、Zyta Gilowska(ジタ・ギロフスカ)女史である。彼女は、もともと、野党POに所属する議員であったが、自らの事務所に親族を雇用していたことが問題視され、事実上の除名処分となり、2005年5月からは無所属議員となっていた。
その後、迎えた総選挙では、子息もPOの候補者名簿から除名され、党に対する怨念を強めていた。
彼女は、リベラル派の強力な論客にして、税制問題の専門家(前職はルブリンカトリック大学(KUL)経済学部財政学科長。修士号は、ワルシャワ大学経済政策学部で取得。大学時代は計量経済学を専攻した)として知られた大物政治家である。先の選挙戦で最大の争点となったリニア税制(法人税所得税付加価値税を一律15%とする)を最初に提唱したのも、彼女である。
今回の入閣に際しては、リニア税制案を撤回することが条件となったとされるが、知識人・ビジネスマン層にも支持者が多い
ギロフスカが財務相(副首相職も兼任)に就任したことで、弱者救済を掲げていたPiSが、政策を大きく修正したとの見方が強まっている。
現在までのところ、ギロフスカは、具体的な税制改革案に付いては発表していない。今日の会見では、財政赤字の削減は必要だが、一部議員が主張している30億ズウォティ規模の一時的歳出削減案の実施は、国家を不安定化させる懸念があるとして一蹴してみせた。
さらに、2007年からEU統計委員会(Eurostat)が、ポーランド政府に対して、政府勘定外(off-budget)である公開型年金基金(OFE)を一般政府勘定に組みこませることを要求している問題(この操作により、財政赤字の対GDP比は1.5〜1.9%ポイントほど上昇すると見られている)では、マルチンキェヴィチ首相と歩調を合わせて、EU側と交渉を継続したいとした。
為替相場に関しては、国家は為替市場に介入すべきではないとした上で、「ズウォティ相場に最適な相場など無い」("nie ma czegos takiego, jak optymalny kurs zlotowki")と発言して、自らのリベラル色をアピールした。ただし、2005年の下半期には、ポーランド政府が国営の国民経済銀行(Bank Gospodarki Krajowej)を通じて、70億ズウォティ相当の市場介入を行った事、介入の大半は前ベルカ政権によって行われたが、マルチンキェヴィチ政権になってからも、05年12月上旬に10億ズウォティ相当の外貨買い介入を行った事を明らかにし、ズウォティ高に振れる市場の動きをけん制することも忘れなかった。この辺りは、お手のものである。
就任一週間で、ギロフスカ蔵相の手腕について評価はできないが、何か、妥協を許さぬ女として知られた姿からはトーンダウンしているような印象を受ける。
折りしも、カチンスキ大統領は、寄りによって、狭隘な民族主義を掲げる「自衛」(Samoobrona)を含む連立政権構想をぶち上げて、内外の注目を大いに集めている。
いよいよ、ポーランド政府への批判トーンを強める時が来たと感じている。