先週の土曜日にワルシャワを発ち、一昨日まで「ポズナン国際機械見本市」に参加してきた。同じ時期にドイツでもMETAV(メタフ)という世界最大の機械見本市が開かれているが、ポズナンの見本市もなかなかの盛況ぶりだった。

ほんの2、3年前まで、「機械の数よりコンパニオンの数のほうが多い」と揶揄されていた見本市だが、展示スペースが大幅に拡張された結果、今まで高い旅費をかけてドイツのMETAVまで出かけていかざるをえなかったポーランド人バイヤーを多く引き付けるようになっている。

ところで、日本は、1982年以来、世界の機械生産シェアでトップを独走(全世界シェア3割)しており、二位のドイツ(2割)を頭ひとつ分、引き離しているが、輸出先で見ると、米国、中国市場がそれぞれ2割、以下、台湾、韓国と続き、ヨーロッパ向けの輸出額は全体の1割を切っている現状だ(JMTBA資料)。

アジアでは日本製の機械が幅を利かせる一方、ヨーロッパでは、ドイツ製の機械が市場を席巻しているということだ。 しかし、ここへ来て、本国の景気回復により、金回りがよくなった日本メーカーもドイツの牙城を切り崩すべく、再び、対ヨーロッパ積極戦略に打って出ている。ポズナンの機械見本市にも3年前は5社(代理店出展含む)しかいなかった日本メーカーも、今年は20社(同)を超えるまでになった。
そのほかにも、視察員を派遣してきた日本メーカーも多く、欧州の東側でも、これから日本メーカーの健闘が期待される。

但し、目下、日本メーカーの東欧での最大の顧客となっているのは、現地に進出している日本企業(主として自動車関連)の工場だ。機械の世界というのは面白くて、ドイツ企業はドイツ製機械を使い、日本企業は日本製機械を使う。従って、東欧で日本企業の工場が増えれば増えるほど、日本製機械の輸出額も伸びて行くことになる。2006〜2007年には、ポーランド進出の日系製造業メーカー数も50社を超えると見られており、今後とも、日系プラント向けの機械輸出は増大の一途をたどるだろう。

しかし、進出日本企業に頼ってばかりでは、機械の輸出は思うように伸びない。
現地の下請けメーカーが、台湾・韓国製よりも3割は高いと言われている日本製の高性能機械を買って、ライバルよりも技術的に困難な部品の生産に乗り出すようになると、輸出ドライブも急になる。

そのために必要とされるのは、リスクを取ることを恐れない高い志を持ったポーランド人経営者と、高性能機械のオペレーションに果敢に挑戦していく優秀な労働力の存在だ。
かつての日本も、1960年代まで、ドイツ製やスウェーデン製の高性能機械や、フランス製(!)やアメリカ製の高性能コンピュータを相当の無理をして輸入して、それを徹底的に使いこなすことから、高度経済発展へのきっかけを掴んでいった。

技術は、まず模倣することから始まると言われる。ポーランド人が、日本製とドイツ製の世界最高水準の機械を巧く使い分けることにより、まずは、現地に進出している外資各社に対して、高精度の部品を供給することに成功し、延いては、ポーランドが本格的な産業立国への仲間入りをしていく将来を思い願ってやまないものである。