経済

ワルシャワの中心街、イェロゾリムスキェ通りに大きく掲げられたティーポットから勢いよくほとばしるジャスミン茶の広告が先日、静かに引き降ろされた。今年3月に新規に開設されたLOTポーランド航空によるワルシャワ−ペキン便の就航を祝う壁面広告が外されたのは、他でもない同路線の閉鎖(6月6日に最終便がワルシャワを飛び立つ)によるものである。

このところポーランドでは、建設現場を中心に不足する労働力不足を補うために中国から期限付きの特別団体ビザで大量の単純労働者を入れる動きが活発化するなど、中国との関係強化に官民挙げての取り組みが行われている。中国からの単純労働者の移送後には、…

2012年にポーランド・ウクライナ共催で行われるサッカー・ユーロカップまでに906キロの高速道路を建設し、総延長キロを1605キロとするというのが現政権グラバルチク建設相の構想であるが、ポリティカ誌(2008年5月3日号)は特集記事で2012年までには200−300キロの高速道路建設が限界、ポーランド全土の高速道路網建設が終了するのは2020−2030年になるとの大胆な見方を示した。

ポーランドの高速道路で重要なものは3本あって、北の輸出港グダニスクからトルン、ウッジ、南部のカトヴィツェを経由しチェコ国境まで南北を結ぶA1線、首都ワルシャワ西に伸びて行き、ウッジ、ポズナンを経由してドイツ国境まで抜けるA2線、南部の要衝を結…

ポーランド―ウクライナの国境地帯に流れるブク川を巡っては、「ブク川の向こうの同胞」(Rodzacy za Bugiem)という言葉がある。これは、同国の長い対ロシア蜂起の歴史の中でシベリアに追放されたポーランド人や旧ポーランド領であった現在のリトアニアやベラルーシ、ウクライナ西部といった地域に戦後も踏みとどまったポーランド系住民を指す言葉である。

2004年のEU加盟後、ポーランドから英国、アイルランド等のいち早く旧東欧諸国に対して労働市場を開放したEU諸国への移民が急増し、一部地域では労働者不足が深刻化し始めている。労働力不足を解決する切り札としてポーランド政府が期待を寄せているのが…

2005年、インドのテレビ生産大手ヴィデオコン(Videocon)がワルシャワ郊外ピャセチノ(Piaseczno)にある仏トムソン(Thomson Displays Poland)のテレビ工場を買収した(詳しい経緯は2006年3月9日の本ブログ参照)。その後、突如として、5月22日付のジェンニク紙にヴィデオコンが同工場に50億ズオチ(約2000億円)を投資して、最新鋭のLCDテレビの組み立て及び拡散版/偏光版等の部品生産も行うとの記事が出た。最終的にはR&D拠点も併設し、総投資額は200億ドル(約8000

ところが、これには現地紙が一斉に反論記事を出している。24日付のジェチポスポリタ紙は、「連帯」ヴィデオコン工場支部長のアンジェイ・マトゥラの語った話として、同工場では3300名の従業員のうち30%の首切りが計画されていることを伝えた。続い…

鳴り物入りで完成したワルシャワ駅前のショッピングモール、ズウォティ・タラスィ(Zloty Tarasy)の売り上げが低迷しているという。ズウォティ・タラスィについては、本ブログ号でも酷評しているが、建物の概観は立派でも中身が充実しない新ショッピングモールが、最新モードを追い求める「着倒れポーランド女性」のおめがねに適わなかった事は、もはや疑いようのない事実である。

ワルシャワは現在、建築ブームの只中にあり、地下鉄ヴィラヌフ駅の近くなどでは、富裕層向けに大規模な高級賃貸マンションの建設が進行中だ。だが、新興住宅地の建設、相次ぐ高速道路の整備などは、どこか新興国らしさを感じさせる月並みなテーマである。そ…

好調な経済発展を続けるポーランドにあって、現政権与党によるユーロ懐疑論(ユーロスケプティシズム)が、その将来に暗雲を投げかけつつある。そもそも、将来のユーロ導入は、ポーランドのEU加盟条件の一つに含まれていたのだが、ここに来て、カチンスキ大統領はユーロ導入にあたって国民投票の実施を示唆し、さらに、スワヴォミル・スクシペク新中銀総裁も今年2月、ユーロ導入は2013年以後となると発言するなど、政権によるユーロ懐疑論がエスカレート化の兆しを見せている。

さて、ユーロ導入を遅らせることによるデメリットとして、2月9日付けのガゼタ・ヴィボルチャ紙は、①(ポーランド通貨ズウォティ高が進行することにより)ポーランドがEUから受け取る補助金がズウォティ換算で目減りしてしまうこと、②ユーロ導入国で構成さ…

今ワルシャワでは、来週2月7日(水曜)にワルシャワ中央駅となりにオープン予定の大型ショッピングモール、「ズウォティ・タラスィ」(黄金のテラスの意味)の話題で持ちきりだ。同プロジェクトは、総工費15億ズウォティ(600億円)とも言われ、総床面積22万5000平方メートル(うち、オフィス部分が4万5000㎡、地下部分の面積が8万6000㎡)、地上7階建て、地下4階建て(うち、地下駐車場が2階分を占め、1万6000台収容可能)の超巨大プロジェクト(施主はオランダ系のING Real Estate)だ。

ただ、自分自身は、2月2日付けのガゼタ・ヴィボルチャ紙の記事を読んで意気消沈してしまった。 記事の伝えるところによると、同ショッピングモールには、ポーランド初の出店となるブランドとして、化粧品・アクセサリーのクレール、ボディ・ショップ、化粧…

ネットコンテンツの世界というものは、優れてローカルで民族色にあふれたものだ。ここポーランドでは、今週木曜日(2月1日)Gadu-Gadu(ガドゥガドゥ)というチャットサイトを運営する会社がワルシャワ証取に上場される運びで、投資家の注目を集めている。ニューズウィーク誌2月4日号に拠れば、ポーランドではすでに3世帯に1世帯の割合でネットが普及しており、これは、ルーマニア、ブルガリア、ウクライナの10世帯あたり1世帯と比較すると格段に多いという。

さて、ガドゥガドゥというのは、ポーランド語の「おしゃべりする」という動詞にあたるガダッチ(gadac)から来ている名称で、一説によると、同国のネット利用者の半数が利用しているソフトだという。 斯く言う自分もPCにガドゥガドゥをダウンロードしている…

ポーランドの実質GDP成長率は、2003年の3.8%、2004年の5.3%、2005年の3.5%と推移し、2006年1〜3月は5.2%、4〜6月は5.5%、7−9月も5.5%ほどの高い水準を維持する見込みだ。

これを受けて、小売販売高も2006年2月から8ヶ月連続で前年同月比10.0%を越す高い伸びを示しており、直近の9月のデータでは同14.5%の上昇を記録している。更に、2003年には20.0%にも達していた失業率も直近では、15.2%に下が…

このほど、ポーランド外国投資庁(PAIiIZ)は、2010年には欧州で販売される液晶テレビのうち4台に3台はポーランドで生産される(年産3500万台体制!)という驚くべき予測を発表した(ガゼタ・ヴィボルチャ紙、11月3日号)。同庁に拠れば、現時点でポーランドは欧州の平面テレビ(液晶+プラズマ)で約20%のシェアを抑えているという。

同日、船井電機が南西部のノヴァ・スルに、1740万ユーロを投じて液晶テレビ工場の建設を行うことを正式発表した。この投資案件は、ブリジストンが投資を見合わせた正にその土地で行われ(詳細は、本ブログ2006年7月4日号)、船井電機と系列各社が…

10月24日に住宅建設大手ドム・デヴロップメント(Dom Development)社がワルシャワ証券取引所に上場、一株85ズウォティ(1ズウォティ=39円)の初値に対して約40%高の121ズウォティの終値を付けて初日の取引を終えた。

投資家の中には、銀行その他からカネを借りて、同社株の購入に踏み切ったものも多かった模様だ。ワルシャワはいまや空前の不動産ブーム、ブームを下支えしているのが、体制転換から15年余を経て、ようやく衣と食から始まって、身の回りの家電製品にもほぼ…

東芝がポーランド南部のコビェジツェ(ヴロツワフ近郊)に50億円を投じてLCD(液晶)テレビ工場を建設するニュースは、すでに日経新聞等で報じられた通りである。今回は、13日付プルス・ビジネス紙の記事からこのニュースを再度取り上げてみたい。

実は、複数の本ブログ愛読者の方から、ポーランド語の経済ニュースの読み方を教えてほしいと言うお声を頂戴しているので、この機会を利用して、ポーランド語文法の世界にも少し触れてみたいと思った次第でもある。 Toshiba Corporation zainwestuje ok. 167 …

このところ、ポーランド最大の保険会社PZU社のネツェル(Netzel)社長を巡る黒い資金の流れを追っていた(資金の出所はグダニスク系マフィア)が、現時点ではまだ記事を纏められない段階にある。そこで今日は中国企業がいよいよ本格的にポーランド進出をしてくるというお話をしようと思う。

9月7日付ポーランド通信社電によれば、中国資本のMin Hoong Development社(本社香港)がシュチェチンにて5億ユーロから10億ユーロに上る不動産投資を行う意向である*。計画では、同市ドンビェ湖周辺に滞在型ホテル、高級高層住宅、ヨットハーバー、地…

ポーランドでは、「FDI受入額年間100億ドル達成」が予てより非公式的な政策目標に掲げられており、実際に、2000年にはTPSA(ポーランド通信)の民営化などもあり、FDI流入額が106億ドルに達した。しかし、その後は、概ね年間60〜70億ドル台で推移している。

8月21日付ジェチポスポリタ紙に拠れば、2006年上半期には、80社以上の外資系企業が、ポーランドにおいて総額40億ドルほどの投資計画を発表したと言う(新規雇用創出予定数は約3万6000人)。以下に、同紙で紹介された大型投資プロジェクトの…

このほど、ブリヂストン社がポーランドで280億円(2億ユーロ)相当の投資を行い、トラック・バス用のラジアル・タイヤの生産を2009年中に開始することが発表された。

工場建設予定地は、対ドイツ国境に程近く、バルト海を背後に控えたスタルガルド・シュチェチンスキ(ポモジェ経済特区のサブゾーンに指定)で、2011年上半期までに日産5000本体制を敷く意向である。 同社は、ポーランドですでに2拠点(ポズナンのタ…

先日、セバスティアン・ミコシュ前外国投資庁副長官が辞任した(マフィアと関係があるミコシュ前国庫相とは別人です、念のため)。このたび、彼は、Plus Biznes紙に対して、ポーランドが近隣諸国と争って、その誘致に失敗した外資投資プロジェクトについてのウラ話(podszewka)を明かした。

まず、歴代の大統領、首相の外資誘致への意気込みに付いて。 クファシニェフスキ前大統領(SLD: 民主左翼連合) 「外資にとって、大統領との面会はとても大事なことだ。彼はこの任務を完璧にこなした。ヒュンダイ自動車、LGをもてなしたときには、韓国語を少…

7月4日に経済省から最新版『経済特区レポート』がプレスリリースされた(http://www.mgip.gov.pl/Wiadomosci/Strona+glowna/SSE+2005.htm)(英語版なし)。ポーランドでは、ユニークな外資誘致政策として、「経済特区」の制度がある。

経済特区(specjalna strefa ekonomiczna)は、1994年に出された「経済特区に関する法律」(Dz. U. 1994 Nr 123, poz. 600)で導入が決定され、2006年現在、全国に14箇所の経済特区が稼動中である。 経済特区の一般的なイメージとしては…

先日、中央統計局が発表した2006年5月末のポーランドの失業率は16.5%。もちろん、EU域内で最悪の数値である。しかし、昨年5月末時点での失業率(18.5%)よりは改善している。

ここへ来て、ポーランドの失業率の推移は、明らかな下降曲線を描き出している。 ポーランド人の雇用吸収の立役者となっているのは、①外資系企業による新規雇用、②低賃金の非正規雇用、③西欧への出稼ぎ労働の主として3つの経路である。 外資は、2004年末…

先週の土曜日にワルシャワを発ち、一昨日まで「ポズナン国際機械見本市」に参加してきた。同じ時期にドイツでもMETAV(メタフ)という世界最大の機械見本市が開かれているが、ポズナンの見本市もなかなかの盛況ぶりだった。

ほんの2、3年前まで、「機械の数よりコンパニオンの数のほうが多い」と揶揄されていた見本市だが、展示スペースが大幅に拡張された結果、今まで高い旅費をかけてドイツのMETAVまで出かけていかざるをえなかったポーランド人バイヤーを多く引き付けるように…

PKN Orlen(オルレン)社はポーランド最大の石油精製会社として、同国を代表する多国籍企業のひとつとして君臨しつつあるが、本ブログでも度々指摘している通り、その経営には不透明かつ稚拙な部分が多い。

PKN Orlen社では、予てより、国外展開を積極的に推し進めており、5月24日には、倒産したロシアの石油大手Yukos(ユーコス)社が有していたリトアニアのMazeikiu Nafta(マゼイキュ・ナフタ)社の発行済み株式の53%を14億9000万ドルで買収してい…

ワルシャワ証券取引所は連日の大商いで、5月11日(木)には、WIG(ワルシャワ証取指数)が史上新高値(45,894.55)を付けた。

マーケットの牽引役となっているのは、石油・ガス関連(PKN Orlen社、Lotos社、PGNiG社)、精銅(KGHM社)などの資源株である。 とりわけ、上海市場での銅価格高騰を受けて、欧州第2位の産銅量を誇るKGHM社の株価は135ズウォティ(約5100円)の高値…

ポーランドでは、反ユダヤ主義を標榜する「ラジオ・マリア」をカチンスキ大統領が擁護し、過激な民族主義を掲げる「自衛」との連立政権が発足、数日中にも閣僚の一部入れ替えが行われる模様である。

これを受けて、過去に駐仏大使、駐露大使を務めた老獪な職業外交官、ミレル(Stefan Miller)外相も辞意を表明した。 今後、ポーランドの対近隣諸国関係が悪化することは避けられまい。さて、去年、11月17日付けの記事タイトルは「ポーランド・ロシア貿…

このところ、中欧では自動車産業を巡る動きが活発化している。4月28日夜、ソウルにて現代自動車会長の鄭夢九(チョン・モング)が贈賄疑惑で逮捕された。読売新聞は、「絶大な権限を持つオーナー経営者の逮捕は、世界展開を進めるグループにとって、大きな打撃になるのは必至だ」(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060428-00000514-yom-int)とまで報じている。

現代自動車は、チェコで2008年10月を目処に、チェコ史上最大規模のFDI案件となる総額10億ユーロ規模の投資を行い、年産30万台体制の自動車工場を建設する予定であるが、翌29日付けのGazeta Wyborcza紙に拠れば、早くも、チェコ政府筋は、工場建…

以前から謎に思っていたことだが、中国がグダニスク(ポーランド北部の貿易港)に総領事館(Konsulat Generalny)を持っている。

グダニスクにある諸外国の総領事館は、中国以外では、歴史的な関係が深いドイツ、スラブ三国、スカンジナビア諸国(ドイツ、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、アイスランド、スウェーデン)のみで、以前旅行したときに偶然発見したレンガ造りの鄙びた中国総…

今日は、BPH-Pekao銀合併問題に付いて簡単に触れた後、「世界大テレビ戦争」と題して、今執筆中のとある原稿から、目くるめく変化する、ポーランドのテレビ生産業界の勢力図に付いて紹介したい。

毎週、月〜木の午後10時40分頃から3チャンネル(ポーランドテレビ1)で、Prosto w oczy(直視)という番組をやっている。 この番組の司会は、モニカ・オレイニク(Monika Olejnik)という、ポーランド女性の中でもとりわけ、サド気が強そうなジャーナ…

今回は、大統領(カチンスキ)と中銀総裁(バルツェロヴィチ)の対立という観点から、カチンスキ批判を繰り広げてみたい。

そもそも、カチンスキは選挙戦のさなかから、「俺が大統領になったら、バルツェロヴィチはクビにする」と明言していた。これに対して、バルツェロヴィチも盛んに応戦し、とりわけ、カチンスキが大統領に就任してからは、中銀総裁という立場にありながら、折…

最近のポーランドの外資の動向を見ていると、少し気になる兆候が見られる。

それは、今まで、次第に弱体化しつつあるかのように見えていた同国の「労組」の活動が、ここに来て、活発化しているように思えることだ。 去年春にもある日系のプラントで、1150名いる従業員のうち、350名を解雇しようとしたところ、約100名の連帯…

今朝早くに下シロンスク地方の小都市を訪ね歩いた旅行から戻ってきた。詳細は、『ポーランド経済再生の現場を行くシリーズ 2』に譲るとして、今日は、少し違った観点からポーランド経済を眺めてみたいと思う。

自分で言うのもなんだが、私は料理が上手い。今日も、ハンガリーの代表的な料理である「グヤーシュ」を作ってみた。まず骨付き牛肉1キロを丁寧に脂肪を取り除いて角切りにする。牛肉は骨付きを選ばないと美味しくない。にんにくを炒めた上にドンドン肉を載…

ワルシャワ郊外にジェラニィ(Zeran)という地区がある。ここには、戦前からフィアット社の自動車組み立て工場があった。戦後は、「個人用自動車工場」(FSO)という素っ気の無い名前に改名して、フィアットからライセンス供与を受けたセダンを生産していた。

FSO社も、体制転換後をさまよい歩き続ける企業の一つである。同社の最近の歩みを纏めてみた。 1988−89年 ダイハツ、ルノーが経営参加も含めた提携話を打診。 とりわけ、ダイハツは、ポーランドを拠点として、フル車種生産体制を敷き、一挙に東欧市場と…