このところ、ポーランド最大の保険会社PZU社のネツェル(Netzel)社長を巡る黒い資金の流れを追っていた(資金の出所はグダニスク系マフィア)が、現時点ではまだ記事を纏められない段階にある。そこで今日は中国企業がいよいよ本格的にポーランド進出をしてくるというお話をしようと思う。


9月7日付ポーランド通信社電によれば、中国資本のMin Hoong Development社(本社香港)がシュチェチンにて5億ユーロから10億ユーロに上る不動産投資を行う意向である*。計画では、同市ドンビェ湖周辺に滞在型ホテル、高級高層住宅、ヨットハーバー、地域住民用の集合住宅を建設すると言う。同社のYu Jian Er社長は談話を発表し、今後5−10年以内に計画を実行するとしており、早ければ、今秋中には出されることになっている投資許可を待って、直ちに建設に取り掛かるという。


計画では、地域住民用の集合住宅用地だけで50ヘクタールを確保し、1万3000人規模の集合住宅を建設する。建設用地に付いては、最短でも30年間の賃貸契約を市当局と結ぶか、官民パートナーシップ(PPP)方式による開発とすることが検討されている。7日の投資趣意書の交換式には在グダニスク中国総領事館からXu Min総領事も駆けつけ、中国側の同事業への関心の高さを窺わせた。


さて、ポーランドへは、中国の製造業メーカーも投資を検討し始めている。ポーランド北部に展開するスウプスク経済特区は、ポーランドに14箇所展開する経済特区の中で、投資累積額、新規雇用創出数とも最低を記録している。地域経済の基盤となっているのは、漁業や林業などの第1次産業であり、住民の所得水準も低い。
そんなスウプスク経済特区に今年7月、Athletic Manufacturing社という中国メーカー(EIWブランド)が800万ズウォティを投じて年産20万台体制の自転車工場を稼動させた(雇用者数150名)(http://www.jetro.go.jp/poland/pdf/poland200410.pdfなど参照)。
スウプスク経済特区では、2004年頃からコシャリン・サブゾーンに「中国企業工業団地」を設定しており、今後とも、同地への中国企業の誘致に期待をかけている。


まだまだ噂話のレベルに過ぎないが、最近、いろいろな処で中国メーカーが、いよいよポーランドに大型投資を構えてくるのではないかという話が聞かれるようになった。
周知のように、中国政府は、年々厳しさを増す世界各国からの貿易不均衡是正要求に応えて、自国企業の海外現地生産を奨励する政策を積極展開している。
中国企業の現地化とともに、「顔の見えない恐ろしい経済大国」としての中国のイメージが良い方向に変わってくれば、同じアジア人として欧州その他に住む在外邦人にとっても、思わぬプラス効果が現れてくることが期待できるかも知れない。


*今回、シュチェチンで事業を手がけるのは、Min Hoong社の子会社であるTian Yu社である。Min Hoong Development社は20年前に香港で設立され、中国全土で不動産投資を行っている会社で、ポーランドでは1991年から操業している。現在までに、ソポト市内でホテル・レストラン事業を、ワルシャワ市内で柵付き高級住宅地事業を展開し、累積投資額は2000万ドルとなっている。