2005年、インドのテレビ生産大手ヴィデオコン(Videocon)がワルシャワ郊外ピャセチノ(Piaseczno)にある仏トムソン(Thomson Displays Poland)のテレビ工場を買収した(詳しい経緯は2006年3月9日の本ブログ参照)。その後、突如として、5月22日付のジェンニク紙にヴィデオコンが同工場に50億ズオチ(約2000億円)を投資して、最新鋭のLCDテレビの組み立て及び拡散版/偏光版等の部品生産も行うとの記事が出た。最終的にはR&D拠点も併設し、総投資額は200億ドル(約8000

ところが、これには現地紙が一斉に反論記事を出している。24日付のジェチポスポリタ紙は、「連帯」ヴィデオコン工場支部長のアンジェイ・マトゥラの語った話として、同工場では3300名の従業員のうち30%の首切りが計画されていることを伝えた。続いて、ピャセチノの地元紙クリエル・ポウドニョヴィ(Kurier Poludniowy)紙は、この投資プロジェクトは非常に胡散臭い(podejrzany)なものだとの論陣を張って、以下のような取材結果を披瀝した。

―ピャセチノでは以前からヴィデオコン工場での首切りのうわさが立っていた。今回のジェンニク紙の記事は地元では驚きをもって迎えられている。内部関係者の話によれば、同工場ではブラウン管から液晶への転換がうまく行っておらず、「薄型の」ブラウン管を製造する試みを行ったものの、現在、稼動しているラインは一本だけであるという。同工場は月間600万〜1500万ズオチの損失を出しており、ヴィデオコンでは事態打開の目的で1億2000万ズオチに上るファイナンスを行った模様である。
同工場では、1200名規模での首切りを労組側に提案しており、すでに労使間の交渉は数ヶ月間に渡って継続している。ヴィデオコンは銀行に対して4000万ズオチの債務を負っており、工場側は、債務圧縮の目的で従業員に対して9か月分の月給に相当する一時金(odprawy)の支払い(ただし一人当たり4万5000ズオチ以下)および賃金の20%カットを提示しているが、労組側との交渉は難航している。
5月21日ワルシャワ市内ハイアットホテルでインド大使館の主催で開かれたポーランド=インド二国間関係をテーマとしたシンポジウムの席上、ヴィデオコン社の副社長アーヴィンド・バリ(Arvind Bali)は、『(ピャセチノでの)投資はポーランド政府の支援なくしてはあり得ず、同時に、労組側には解雇条件をそのまま呑んでもらうことになる。』との強気の発言を行った。同工場では、会社が倒産すれば、我々もポーランドから出て行くさ、とのインド側の発言も聞かれるようになっている。―


ポーランドでは、マスコミ間の競争が熾烈を極めており、十分なウラを取らずに記者が記事を書いてしまうことも多い。今回のジェンニク紙の特ダネ記事もそのご他聞に漏れなかったようである。