日本企業の進出という点では、チェコはポーランド以上に成功を収めている国である。

1993年〜2005年上半期までのチェコのFDI累積額は、466億4900万ユーロに達しており、2005年末時点での一人当たりFDI累積額では、中東欧諸国中では、エストニア(7717ユーロ)、ハンガリー(5133ユーロ)、チェコ(4932ユーロ)の順に大きくなっている。これに対して、ポーランド、スロヴァキアは一人当たりの累積額で見ると、まだ、2000ユーロ近傍の水準に留まっている。
その結果、チェコでは、鉱工業部門の雇用の37%、同販売高の52%、同輸出の60%が外資によって担われるに至っている。


日本は、FDI累積額ベースで見ると、2005年上半期では、第10位を占めるに過ぎないが(8億4700万ユーロ、全体の2%)、グリーンフィールド投資に限って言えば、日本はドイツに次いで2番目の規模を誇るとされている。チェコ投資庁のトマーシュ・フルダ(Tomas Hruda)CEOに拠れば、現在、チェコでは、160社の日本企業が活動しており、うち、75社が製造業企業であり、3万2000人以上の労働者を雇用するに至っているという。
今年4月には、東京三菱UFJ銀行が、ワルシャワに次いで、プラハにて、中欧地域では2番目となる支店の開設を行い、進出日本企業への金融サービスも強化される方向である。


2006年現在では、自動車産業、電子機器産業を中心に以下のような日系企業の大規模投資が実現している。

トヨタプジョーシトロエン(TPCA): 13億ユーロ
デンソー: 2億5500万ユーロ
パナソニック: 1億3900万ユーロ 
フタバ工業: 9100万ユーロ
三菱電機: 3200万ユーロ
カヤバ工業: 2900万ユーロ(概算)
光洋精工: 2870万ユーロ
昭和アルミニウム工業: 2800万ユーロ


これに加えて、7月12日付チェコ投資庁ニュースに拠れば、日立が系列のIPS Alpha社(LCDディスプレイ製造)を伴って、対ドイツ国境(バイエルン州)に近接したジャテツ市(ウスティー・ナド・レーベム地方)において、9000万ユーロの投資を行い、2000人を雇用して、2007年夏からプラズマテレビ液晶テレビを生産する予定であるという。
同社では、2008年までに、欧州での薄型テレビ需要が2000万台/年にまで伸びると予測している。
これで、中欧では、シャープ(ポーランド液晶テレビ生産予定)、パナソニックチェコプラズマテレビ液晶テレビ生産)、日立(チェコプラズマテレビ液晶テレビ生産予定)の日系3社が薄型テレビの生産に乗り出すことが明確になった。
中欧では、LG、LG-フィリップス、サムスン、デーウなどの韓国勢による薄型テレビ生産も本格化の兆しを見せている。
今までは、自動車産業へのFDiが多かった中欧だが、これからは、テレビ、家電などの電子機器産業向けのFDIが本格化する。
中欧諸国へのFDI流入は、裾野を大きく広げながら、今後とも順調に伸びていくと見られる。